在宅介護を支える柱の一つが、ホームヘルパーが自宅に来てくれる訪問介護です。ただ、いざ使おうとすると「掃除は頼めるの?」「庭の草むしりは?」「同居している家族の分の料理は?」と、頼めることと頼めないことの線引きが分かりにくいもの。

この記事では、訪問介護の「できること・できないこと」を一覧で整理し、身体介護と生活援助の違い、同居家族がいる場合のルールまでわかりやすく解説します。在宅介護で使えるサービス全体は在宅介護とは?使える6つのサービスと限界の見極め方をご覧ください。

※本記事は2026年8月時点の制度情報に基づく一般的な解説です。実際に頼める内容はケアプランや事業所によって異なります。詳しくは担当ケアマネジャーにご確認ください。

訪問介護とは:ヘルパーが自宅で支える

訪問介護は、訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問し、日常生活を支援する介護保険サービスです。要介護1〜5の方が対象で(要支援の方は総合事業の訪問型サービスなど別枠になります)、費用は原則1〜3割の自己負担で利用できます。

訪問介護のサービスは、大きく「身体介護」「生活援助」の2つに分かれます。この区分を理解することが、「できること・できないこと」を知る出発点です。

身体介護と生活援助の違い

身体介護 生活援助
内容 利用者の体に直接触れる介助 家事の援助(体に触れない)
入浴・排泄・食事の介助、着替え、移動の介助、体位変換 掃除、洗濯、調理、買い物、ゴミ出し
料金 生活援助より高め 身体介護より安め

両方を組み合わせて利用することもできます。たとえば「入浴介助(身体介護)+そのあと居室の掃除(生活援助)」といった形です。どのサービスをどれだけ使うかは、ケアプランで決まります(ケアマネジャーの探し方)。

訪問介護で「できること」一覧

身体介護(体に触れる介助)

  • 食事の介助、水分補給の介助
  • 入浴・清拭(体を拭く)、洗髪
  • 排泄の介助、おむつ交換、トイレへの誘導
  • 着替え、整容(洗顔・歯磨き・爪切りなど)
  • 寝返りや起き上がり、車いすへの移乗の介助
  • 服薬の介助(見守り・確認)
  • 通院などの外出時の付き添い(一定の条件のもと)

生活援助(本人のための家事)

  • 居室の掃除、ゴミ出し
  • 洗濯、衣類の整理
  • 食事の準備・調理・片付け
  • 日常品の買い物、薬の受け取り
  • ベッドメイク

ヘルパーに頼める身体介護(食事・入浴・排泄の介助)を、家族が自宅で行うときのコツは在宅介護の食事・入浴・排泄の基本で解説しています。

訪問介護で「できないこと」一覧

ここが最も誤解されやすいところです。訪問介護は「本人が日常生活を送るために必要な援助」に限られるため、次のようなことは頼めません。

本人以外のための行為

  • 同居している家族の分の調理・洗濯・掃除
  • 来客への対応、家族が使う部屋の掃除

日常生活の援助を超える行為

  • 庭の草むしり、花木の水やり、ペットの世話
  • 大掃除、窓のガラス磨き、家具の移動、床のワックスがけ
  • お正月・お盆などの特別な料理づくり
  • 金銭・貴重品の管理、預貯金の引き出し

医療行為

「できないこと」と言われると冷たく感じるかもしれませんが、これは介護保険が「本人の自立した生活を支える」ための公的サービスだから。家事代行のように何でも頼めるわけではない、という点を押さえておくと、トラブルを避けられます。

グレーゾーンになりやすい行為

「できる・できない」がはっきり分かれるものばかりではありません。判断が分かれやすく、事業所やケアプランによって扱いが変わるものもあります。代表的な例を知っておきましょう。

  • 安否確認・見守りだけの訪問:単なる見守りは生活援助に含まれにくく、別のサービス(見守りサービス等)で対応することが多いです
  • 調理の下ごしらえや作り置き:その日の食事の準備は生活援助ですが、何日分もの作り置きは「日常の範囲を超える」とされることがあります
  • 薬の管理:服薬の見守り・確認はできますが、薬の仕分け(一包化された薬を日付ごとにセットするなど医療的判断が絡むもの)は範囲が限られます
  • 爪切り・耳掃除:一定の条件下では身体介護として可能ですが、糖尿病などで医療的配慮が必要な場合は医療職の領域になります

迷ったら「これは頼めますか?」とケアマネジャーに個別に確認するのが確実です。ルールを杓子定規に捉えるより、本人の自立を支えるために必要かという視点で相談すると、道が開けることがあります。

要注意:同居家族がいる場合の生活援助

特に知っておきたいのが、同居している家族がいる場合、生活援助(掃除・洗濯・調理などの家事)は原則として使えないというルールです。「家族がいるなら、家事は家族ができるはず」という考え方に基づいています。

ただし、これには例外があります。同居家族が次のような状況で家事を行うのが難しい場合は、ケアプランに位置づけたうえで生活援助を利用できます。

  • 家族自身が高齢・病気・障害がある
  • 家族が仕事で日中いない(不在の時間帯の援助など)
  • 家族が育児や別の介護を抱えている

「同居だから一律ダメ」ではなく、個別の事情によって認められるということです。判断はケアマネジャーが行うので、家庭の状況を率直に相談してください。なお、身体介護には同居家族の有無による制限はありません

「できないこと」を頼みたいときは

訪問介護で頼めないことも、別の方法で解決できる場合があります。

  • 保険外の家事代行・民間サービス:庭の手入れ、大掃除、本人以外の家事などは、全額自己負担の民間サービスで対応できます
  • 自費の訪問介護:同じ事業所でも、介護保険外の自費サービスとして柔軟に対応してくれることがあります
  • ボランティア・地域の支え合いサービス:ゴミ出しや電球交換など、地域の助け合いの仕組みがある場合も

介護保険で「できること・できないこと」を理解したうえで、足りない部分を保険外で補うのが、無理のない在宅介護のコツです(介護用品・サービスの選び方)。

よくある質問

Q. ヘルパーに買い物を頼めますが、たばこや晩酌のお酒も買ってきてもらえますか?

A. たばこやお酒などの嗜好品は「日常生活に必要なもの」とはみなされず、原則として生活援助の対象外です。日用品や食料品の買い物は頼めますが、線引きがあることは知っておきましょう。

Q. 通院の付き添いは頼めますか?

A. 一定の条件のもとで、通院時の外出介助(移動の付き添い)は身体介護として利用できる場合があります。ただし院内での待ち時間の付き添いなどは扱いが異なることもあるため、ケアマネジャーに具体的に相談してください。

Q. 頼みたいことが対象かどうか、どう確認すればいいですか?

A. 担当のケアマネジャーに聞くのが確実です。「これは頼める?」と個別に相談すれば、ケアプランに組み込めるか、保険外になるかを判断してくれます。迷ったら遠慮なく確認しましょう。

まとめ:「本人のための日常生活の援助」が基準

訪問介護は、身体介護(体に触れる介助)と生活援助(本人のための家事)に分かれ、いずれも「本人が日常生活を送るために必要な援助」に限られます。本人以外の家事、庭仕事やペットの世話、大掃除、医療行為は対象外。特に同居家族がいる場合の生活援助は原則使えない(例外あり)点に注意してください。

頼めることと頼めないことに迷ったら、ケアマネジャーに相談を。在宅介護の全体像は在宅介護とは?使える6つのサービスと限界の見極め方、介護の始め方は親の介護は何から始める?最初にやること5ステップをご覧ください。

参考にした主な資料