親が倒れたらすぐやること|入院直後の手続き・お金・仕事の休み方を時系列で解説
「お父さまが救急搬送されました」――そんな連絡は、いつも突然です。頭が真っ白になりながら病院に駆けつけ、次から次へと書類を渡され、医師の説明を聞き、会社への連絡も考えなければならない。親が倒れた直後は、やることが一度に押し寄せます。
この記事では、親が倒れて入院したときにやることを、「当日〜数日」「入院中」「退院が見えてきたら」の時系列で整理しました。すべてを完璧にこなす必要はありません。上から順に、いま必要なところだけ確認してください。介護全体の流れを知りたい方は、親の介護は何から始める?最初にやること5ステップ【全体ガイド】もあわせてどうぞ。
※本記事は2026年7月20日時点の制度情報をもとにした一般的な解説です。医療上の判断は必ず医師にご相談ください。
【当日〜数日】病院で最初にやること
病院に持っていくもの
駆けつける際に持っていけると手続きがスムーズなのは、次のものです。そろわなくても診療は受けられるので、まずは向かって構いません。
- 親の健康保険証またはマイナ保険証(見つからなければ後日でも可)
- お薬手帳(飲んでいる薬の情報は治療に直結します)
- 診察券(かかりつけの病院があれば)
- 現金少額、あなた自身の身分証
- 着替え・タオルなどの入院用品(後日で可。院内のコンビニやレンタルで代用できる病院も多い。高齢の親ならではの持ち物リストはこちら)
なお、救急車を呼ぶべきか迷う症状のときは、救急安心センター事業「#7119」に電話すると、緊急性の判断を専門家がサポートしてくれます(未実施の地域もあります)。
入院手続きと書類のポイント
入院が決まると、入院誓約書(身元引受人・連帯保証人の記入欄があるのが一般的)などの書類を渡されます。ここで1つ注意したいのが差額ベッド代(特別療養環境室料)の同意書です。個室などを希望した場合の費用は全額自己負担で、高額療養費制度の対象にもなりません。「大部屋が空いていないので」と案内された場合など、納得できていない段階で署名する前に、費用と必要性を確認してください。
医師からの病状説明は、可能なら家族2人以上で聞き、メモを取りましょう。動転している時期は、聞いたはずの内容をほとんど覚えていないものです。本人に意識がなく治療の同意が必要な場合は、家族が説明を受けて同意の手続きを行うことになります。
【当日〜数日】仕事の休み方・会社への伝え方
検索エンジンに「親が倒れた」と入力すると「仕事休む」という組み合わせが候補に出てくるほど、多くの人が悩むポイントです。結論はシンプルです。
- 最初の数日は、年次有給休暇で対応するのが現実的です。理由を詳しく話す義務はなく、「父(母)が救急搬送されたため」で足ります
- 通院付き添いや手続きのための単発の休みには、介護休暇(年5日、対象家族2人以上なら年10日、時間単位で取得可)が使えます
- 長期化しそうなら介護休業(通算93日・3回まで分割、賃金の67%相当の給付金あり)を検討します。93日は介護し続けるための期間ではなく、要介護認定やケアマネジャー選びなど介護の体制を作るための期間です
そして重要なのが、2025年4月から、家族の介護に直面したことを会社に伝えた従業員に対し、会社側が両立支援制度を個別に説明し、利用意向を確認することが法律で義務化されたことです。「迷惑をかけるから」と隠すより、早めに上司や人事に事実を伝えるほうが、使える制度への最短ルートになります。制度の詳細は全体ガイドのステップ5で解説しています。
【入院中】お金の手続き:高額療養費とマイナ保険証
「入院費がいくらかかるのか」は大きな不安ですが、公的医療保険には高額療養費制度があり、1か月(月の1日〜末日)の医療費の自己負担には、年齢と所得に応じた上限が設けられています。上限を超えた分は、後から申請すれば払い戻されます(支給は受診月から3か月以上後が目安)。
窓口での支払い自体を上限までに抑える方法も知っておきましょう。
- 親がマイナ保険証を使える場合:オンライン資格確認を導入している医療機関なら、事前の手続きなしで窓口支払いが自己負担限度額までに抑えられます
- マイナ保険証を使わない場合:加入している公的医療保険(75歳以上なら後期高齢者医療制度、それ以前は国民健康保険や健康保険組合など)に限度額適用認定証を申請し、病院の窓口に提示します
- 住民税非課税世帯の場合は、入院中の食事代の減額など、別途申請が必要な軽減制度があります。病院の会計窓口や保険者に確認してください
あわせて、親が民間の医療保険・生命保険に入っていないかも確認しましょう。保険証券や通帳の引き落とし履歴が手がかりになります。
もう一つ大切なのが、親のお金の扱い方です。入院費を親の口座から出すこと自体は自然なことですが、キャッシュカードで引き出す場合は必ず領収書を残し、何にいくら使ったか記録してください。後になって兄弟姉妹との間で「お金の使い方」を巡るトラブルになるのを防ぐためです。
【入院中】親の情報リストを作る
少し落ち着いたら、今後の手続きに必要になる親の情報を一覧にまとめておきましょう。入院中は本人に確認できる貴重な期間でもあります。
- かかりつけ医・持病・飲んでいる薬
- 健康保険の種類、介護保険被保険者証の保管場所(65歳以上なら市区町村から交付済み)
- 年金の種類とおおよその受給額
- 預貯金口座・加入している保険・重要書類(権利証・実印など)の保管場所
- 親しい友人・近所の付き合い・お世話になっている人の連絡先
このリストは、この後の要介護認定やケアマネジャーとの面談、施設検討など、あらゆる場面で使い回せます。
【退院が見えてきたら】退院後の生活に備える
病院の相談窓口(医療ソーシャルワーカー)に相談する
「退院後、家で生活できるのか」が心配になったら、病院の地域連携室・医療相談室にいる医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談してください。退院後の生活設計の相談は彼らの本来の仕事であり、遠慮する必要はまったくありません。リハビリを続けるための転院(回復期リハビリテーション病棟など)や、自宅に戻るための準備を一緒に考えてくれます。退院前カンファレンスへの臨み方や家の準備の段取りは退院後の介護に備える|退院前カンファレンスと退院支援の使い方で詳しく解説しています。
退院先の主な選択肢を知っておく
「退院=すぐ自宅」とは限りません。状態に応じて、次のような選択肢があります。名前だけでも知っておくと、医療ソーシャルワーカーとの相談がスムーズになります。
- 自宅に戻る:訪問介護やデイサービスなどの在宅サービス、介護ベッドのレンタル、手すり設置などの住宅改修を組み合わせて生活を再建します
- 回復期リハビリテーション病棟に転院する:脳卒中や骨折の手術後などに、集中的なリハビリを行う専門病棟です。発症からの日数など入院できる条件に制限があるため、該当しそうなら早めに相談を
- 地域包括ケア病棟に移る:在宅復帰に向けた準備を整えるための病棟で、入院期間はおおむね60日が上限とされています
- 介護老人保健施設(老健)に入所する:リハビリを受けながら在宅復帰を目指す介護保険の施設です。利用には要介護認定(要介護1以上)が必要です
どの選択肢が合うかは病状と家庭の事情によります。施設の種類や費用の詳細は老人ホームの種類一覧表|8種類の違い・費用目安・選び方で解説しています。
要介護認定を入院中に申請する
退院後に介護保険サービス(ホームヘルパー、介護ベッドのレンタル、住宅改修など)を使う可能性が高いなら、要介護認定の申請は入院中から進められます。認定調査は病院のベッドサイドでも受けられます。
ただし、タイミングには注意が必要です。発症直後で状態が大きく変わる時期に調査を受けると、実際の生活の困りごとを反映しない結果になりやすいため、病状がある程度安定し、退院の目処が見えてきた段階で申請するのが一般的です。迷ったら医療ソーシャルワーカーや、親の住所地の地域包括支援センターに「いつ申請すべきか」から相談してください。申請から認定までの流れと調査立ち会いのコツは要介護認定とは?申請から認定までの流れと、調査で損をしないコツで詳しく解説しています。
初動でつまずきやすい3つのポイント
- 勢いで仕事を辞めてしまう:入院直後の混乱期に人生の決断をしないでください。まず年休と介護休暇、次に介護休業。判断はそれからです
- 差額ベッド代の同意書に流れで署名する:費用と必要性を確認してからでも遅くありません
- 親のお金を記録なしで使う:領収書と記録が、将来の家族トラブルからあなたを守ります
よくある質問
Q. 遠方に住んでいて、すぐに駆けつけられません。
A. まず病院に電話し、容体と「いつまでに来る必要があるか」を確認してください。書類手続きの多くは後日や郵送で対応できます。近くに住む親族や親の知人に一時対応を頼みつつ、あなたは高額療養費などの調べものや会社との調整といった「遠隔でもできること」を分担するのが現実的です。
Q. 入院費が払えるか不安です。
A. まず高額療養費制度で自己負担に上限があることを思い出してください。それでも難しい場合は、病院の会計窓口や医療ソーシャルワーカーに早めに相談を。分割払いの相談や、公的な貸付・減免制度の案内を受けられる場合があります。黙って滞納するのが一番よくありません。
Q. 本人に意識がなく、お金が下ろせません。
A. 本人の口座は、キャッシュカードと暗証番号が分からなければ原則動かせません。まずは家族が立て替え、領収書を保管しておきましょう。長期化しそうな場合の親のお金の管理(家族信託や成年後見制度など)は、「介護保険・お金」カテゴリーで今後詳しく解説します。
まとめ:完璧でなくていい、順番にやれば大丈夫
親が倒れた直後にやることを時系列で整理しました。当日は保険証とお薬手帳を持って駆けつけ、仕事はまず年休で休む。入院中に高額療養費(マイナ保険証か限度額適用認定証)の手当てをして、親の情報リストを作る。退院が見えてきたら、医療ソーシャルワーカーへの相談と要介護認定の申請。この流れさえ押さえれば、初動で大きくつまずくことはありません。
そして、退院後の生活づくりからが介護の本番です。全体の流れは親の介護は何から始める?最初にやること5ステップ【全体ガイド】で確認してください。