要介護認定とは?申請から認定までの流れと、調査で損をしないコツ
デイサービスもホームヘルパーも介護ベッドのレンタルも、介護保険のサービスを1〜3割の自己負担で使うには、まず要介護認定を受ける必要があります。介護の入り口で誰もが通る、いわば「介護の関所」です。
この記事では、要介護認定の申請のやり方から、認定調査を「普段どおり」に受けるコツ、結果に納得できないときの対処、認定後の更新まで、申請する家族の目線で流れを解説します。
※本記事は2026年7月20日時点の制度情報をもとにした一般的な解説です。運用の細部は市区町村によって異なる場合があります。
要介護認定とは?
要介護認定とは、「どの程度の介護が必要か」を市区町村が公式に判定する仕組みです。結果は軽い順に「非該当(自立)」「要支援1・2」「要介護1〜5」の8段階に分かれ、この区分によって、使えるサービスの種類や介護保険で利用できる金額の上限が決まります。
判定は全国共通の基準で行われ、申請から結果通知までは原則30日以内とされています。費用はかかりません(認定調査も主治医意見書も自己負担なしです)。
誰が申請できる?必要なものは?
申請先は、親が住んでいる市区町村の介護保険窓口です。本人だけでなく家族が代理で申請でき、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所などに申請を代行してもらうこともできます。窓口に行く時間が取れない場合は、郵送やオンラインでの申請に対応している市区町村もあります。
必要なものは概ね次のとおりです。
- 要介護認定の申請書(窓口またはホームページで入手)
- 65歳以上:介護保険被保険者証(65歳になったときに市区町村から郵送されています)
- 40〜64歳:医療保険の保険証(脳血管疾患や若年性認知症など、加齢に伴う特定の病気=特定疾病が原因の場合に対象となります)
- マイナンバーが分かるもの、窓口に行く人の本人確認書類
申請書には主治医(かかりつけ医)の氏名・医療機関名を記入する欄があります。かかりつけ医がいない場合は、市区町村に相談すれば指定医の診断を受ける形で進められるので、申請をあきらめる必要はありません。
申請から認定までの流れ
全体の流れと期間の目安は次のとおりです。
| 段階 | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 1. 申請 | 市区町村の窓口に申請書を提出 | ― |
| 2. 認定調査 | 調査員が自宅や病院を訪問し、心身の状態を聞き取り | 申請から1〜2週間ごろ |
| 3. 主治医意見書 | 市区町村が主治医に依頼(家族の手続き不要) | 並行して進む |
| 4. 一次判定・二次判定 | コンピュータ判定の後、保健・医療・福祉の専門家による介護認定審査会で審査 | ― |
| 5. 結果通知 | 認定結果通知書と被保険者証が郵送で届く | 申請から原則30日以内 |
家族が実際に動くのは「1. 申請」と「2. 認定調査の立ち会い」の2つだけです。そして、このうち結果を大きく左右するのが認定調査です。
1つ実務的な注意があります。主治医意見書は市区町村から主治医に依頼されますが、親が長く受診していないと、医師が意見書を書けず認定が遅れることがあります。しばらく病院にかかっていない場合は、申請の前後にかかりつけ医を一度受診しておくとスムーズです。
認定調査を「普段どおり」に受けるコツ
認定調査では、調査員が全国共通の74項目の基本調査と、数値化されない事情を書き込む特記事項の聞き取りを行います。基本調査のイメージがつかめるよう、分野と質問例を挙げます。
| 分野 | 質問・確認の例 |
|---|---|
| 身体機能・起居動作 | 寝返りできるか、立ち上がれるか、歩けるか、視力・聴力 |
| 生活機能 | 食事・排泄・入浴・着替えが一人でできるか、外出の頻度 |
| 認知機能 | 生年月日や今の季節が言えるか、直前の話を覚えているか、徘徊の有無 |
| 精神・行動障害 | 感情が不安定になることがあるか、昼夜逆転、物を盗られたという訴え |
| 社会生活への適応 | 薬やお金の管理ができるか、買い物や簡単な調理ができるか |
実際の当日は、こうした質問への本人の受け答えと、動作の確認がおおむね30分〜1時間ほどかけて行われます。ここで実態より軽く判定されると、必要なサービスが使えなくなりかねません。次のポイントを押さえてください。
- 家族が必ず立ち会う:親世代は調査員の前で張り切ってしまい、普段できないことまで「できます」と答えがちです(認知症の場合は特にこの傾向が強く出ます)。日頃の様子を知る家族の同席が実態を伝える生命線です。平日の調査に立ち会うために、介護休暇(時間単位で取得可)が使えることも覚えておきましょう
- 困りごとメモを事前に作る:「いつ・どんな場面で・どれくらいの頻度で」困っているかを具体的に書き出しておきます。夜間の排泄の失敗、火の消し忘れ、同じものを何度も買ってくる、服薬管理ができない――こうした具体的なエピソードは特記事項に記載され、審査の判断材料になります
- 本人の前で言いにくいことは別の方法で:排泄の失敗や物忘れの詳細など、本人のプライドを傷つけそうな内容は、メモを調査員にそっと渡す、調査の前後に電話で伝えるといった方法で構いません
- よく見せすぎも、悪く見せすぎもしない:実態より重く伝えようとするのも逆効果です。矛盾があると調査全体の信頼性が下がります。ありのままを具体的に、が原則です
結果が出たら:区分ごとの次の一歩
認定結果通知書が届いたら、区分に応じて次のように動きます。
- 要支援1・2:地域包括支援センターが介護予防のケアプラン作成を担当します。通知が届いたら担当の地域包括支援センターへ連絡を
- 要介護1〜5:居宅介護支援事業所のケアマネジャーと契約し、ケアプランを作成します(作成費用の自己負担はありません)。事業所リストは市区町村や地域包括支援センターでもらえます
- 非該当(自立):介護保険サービスは使えませんが、市区町村の総合事業(介護予防・生活支援サービス事業)による運動教室や生活支援などを利用できる場合があります。地域包括支援センターに相談してください
要介護度ごとに使えるサービスと利用限度額の詳細は、別記事で解説予定です。
結果に納得できないときの2つの手段
「思ったより軽い区分だった」というのは、よくある悩みです。対処には2つのルートがあります。
- 区分変更申請:状態が認定時と変わったとして、改めて認定をやり直してもらう手続きです。いつでも申請でき、結果も通常の認定と同じく原則30日以内に出ます
- 審査請求(不服申立て):都道府県の介護保険審査会に認定の取り消しを求める手続きです。結果まで数か月かかることもあります
実務では、まずケアマネジャーや地域包括支援センターに「なぜこの結果になったと考えられるか」を相談したうえで、区分変更申請を使うケースが多いです。時間のかかる審査請求よりも、現状を伝え直すほうが早く実態に近づけることが多いためです。次の調査では、前回伝えきれなかった困りごとをメモにして臨みましょう。
認定はゴールではない:有効期間と更新
認定には有効期間があります。新規認定は原則6か月、更新認定は原則12か月(市区町村の判断で短くも長くもなり、状態が安定している場合は最長48か月まで)です。
- 更新申請は有効期間が切れる60日前から受け付けられます。市区町村から更新のお知らせが届くので、忘れずに手続きを(ケアマネジャーがついていれば、代行やリマインドをしてくれるのが一般的です)
- 状態が変わったら:有効期間の途中でも、転倒や病気の進行で状態が変わったときは、いつでも区分変更申請ができます。「次の更新まで我慢する」必要はありません
よくある質問
Q. 結果が出るまでの30日間、サービスは使えないのですか?
A. 使えます。介護保険のサービスは申請日にさかのぼって利用できるため、認定結果を待つ間も、暫定のケアプランを作ればサービスを開始できます。退院が迫っているなど急ぐ事情がある場合は、申請時にその旨を窓口や地域包括支援センターに伝えてください。ただし、見込みより軽い区分になった場合は差額が自己負担になることがある点には注意が必要です。
Q. 入院中でも申請できますか?
A. できます。認定調査は病院のベッドサイドでも受けられます。ただし発症直後など状態が大きく変わる時期は実態を反映しにくいため、病状が安定してからの申請が一般的です。詳しくは親が倒れたらすぐやることで解説しています。
Q. 更新のたびに、毎回認定調査を受けるのですか?
A. はい。更新申請でも認定調査と主治医意見書の手続きが改めて行われます。ただし状態が安定していれば有効期間が長めに設定されるため、調査の頻度は次第に下がっていくのが一般的です。更新時の調査も新規と同じく結果を左右しますから、「最近増えた困りごと」をメモにして臨む習慣をつけておくと安心です。
Q. 本人が調査で緊張してうまく話せるか不安です。
A. 調査員は聞き取りに慣れた専門職なので、本人がうまく話せなくても大丈夫です。大切なのは、家族が普段の様子を具体的に補足すること。むしろ「本人がしっかり答えすぎる」ほうが実態とのズレを生みやすいため、事前の困りごとメモを忘れずに用意してください。
まとめ:申請と調査立ち会い、家族の仕事はこの2つ
要介護認定は複雑に見えますが、家族が実際にやることは「申請書を出す」「認定調査に立ち会って普段の様子を伝える」の2つに集約されます。特に認定調査は、困りごとメモの準備で結果が変わりうる最重要ポイントです。
申請のタイミングや窓口に迷ったら、地域包括支援センターに相談を。介護全体の流れの中での位置づけは、親の介護は何から始める?最初にやること5ステップ【全体ガイド】で確認できます。