親が認知症と診断され、在宅での見守りが限界に近づいてきた――そんなとき、ケアマネジャーから提案されることが多いのがグループホーム(認知症対応型共同生活介護)です。

大規模な老人ホームとは違い、5〜9人の少人数で家庭的に暮らすこの住まいは、認知症ケアに特化しているぶん入居条件が独特です。特に「住民票のある市区町村でしか入れない」という制約は、遠方の親を呼び寄せたい家族にとって大きな壁になります。

この記事では、グループホームの入居条件・費用・向き不向き、そして入居後に退去を求められるケースまで解説します。施設全体の比較は老人ホームの種類一覧表をご覧ください。

※本記事は2026年7月20日時点の制度情報に基づく一般的な解説です。認知症の診断・治療については必ず医師にご相談ください。

グループホームとは

正式名称は認知症対応型共同生活介護。認知症の高齢者が、少人数で共同生活を送りながら、食事・入浴・排泄などの介助や機能訓練を受ける介護保険サービスです。

最大の特徴は規模の小ささにあります。厚生労働省の資料によると、1つのユニット(複数の個室と居間・食堂・台所で構成される生活空間)で暮らすのは5〜9人とされています。1事業所あたり1〜3ユニット程度が一般的です。

この小ささには理由があります。認知症の方は環境の変化や大人数の刺激で混乱しやすいため、顔ぶれが変わらない「なじみの関係」の中で暮らすことが症状の安定につながると考えられているのです。入居者が料理の下ごしらえや洗濯物たたみなどを職員と一緒に行う「生活リハビリ」を取り入れる事業所が多いのも、この考え方に基づいています。

入居条件:3つのハードル

1. 認知症の診断を受けていること

医師による認知症の診断が必須です。「物忘れが増えた」という段階では入居できません。まだ受診していない場合は、まず診断を受けるところから始まります(受診すべきサインの見分け方はこちら)。

2. 要支援2または要介護1以上であること

要介護1〜5の方は「認知症対応型共同生活介護」、要支援2の方は「介護予防認知症対応型共同生活介護」という別サービスの扱いになります(要支援1の方は対象外です)。実務上は同じグループホームで受け入れられますが、書類上の名称が違う点は覚えておくとよいでしょう。

3. 施設と同じ市区町村に住民票があること

これが最大の制約です。グループホームは地域密着型サービスに分類され、原則としてその市区町村の住民のみが利用できます。「東京の自分の家の近くに、地方に住む親を呼び寄せたい」という場合、そのままでは入居できません。

方法がないわけではなく、先に住民票を移してから申し込むという手順を踏むことになります。ただし転居のタイミングや手続きは自治体によって扱いが異なるため、必ず事前に転居先の市区町村の介護保険窓口とグループホームに相談してください。順番を間違えると手続きが滞ります。

費用の目安

  • 初期費用:敷金など0〜数十万円程度(厚生労働省の解説では、A事業所5万円・B事業所10万円という実例が示されています)
  • 月額:10〜18万円程度

月額の内訳は、介護サービス費(1〜3割)+家賃+食材料費+光熱水費+管理費などです。管理費は事業所によって0円のところもあれば月2万円台のところもあり、同じ地域でも総額に差が出ます

注意点として、グループホームは負担限度額認定(補足給付)の対象外です。所得に応じた食費・居住費の減額は特別養護老人ホームなど公的施設の制度であり、適用されません。ただし高額介護サービス費(介護費の自己負担上限)は利用できます。費用全体の考え方は老人ホームの費用相場まとめをご覧ください。

職員体制は手厚い

グループホームの人員基準は、日中は入居者3人に対して介護職員1人以上、夜間は1ユニットにつき1人以上の配置が必要とされています。

実際の配置はこれより手厚い事業所が多く、厚生労働省の解説ページでは介護従事者1人当たりの利用者数がAホーム1.15人、Bホーム1.1人という実例が示されています。少人数ケアを実現するための体制が、数字にも表れているといえます。

1日の過ごし方(イメージ)

グループホームの生活は、大規模施設の「サービスを受ける」形とは少し違います。一般的な流れは次のとおりです。

  • :起床・整容の後、職員と一緒に食事の準備や配膳。テーブルを拭く、箸を並べるなど、できる役割を担います
  • 日中:入浴、散歩、買い物への同行、洗濯物たたみ、レクリエーション。多くは「暮らしの中の作業」がそのままリハビリになる設計です
  • 夕方〜夜:夕食の準備を一緒に行い、団らんの後に就寝。夜間は1ユニットに1人以上の職員が対応します

「何もしなくていい」施設ではなく、できることは続けてもらうという方針が基本です。この点が本人に合うかどうかは、見学時に実際の様子を見て判断してください。

グループホームが向いているケース・向かないケース

  • 向いているケース:認知症の診断があり、大人数の環境では落ち着かない/身体はある程度動き、日常の作業に参加できる/自宅での見守りが限界だが、大規模施設には抵抗がある/住み慣れた地域を離れたくない
  • 慎重に検討したいケース:医療的ケア(たん吸引・経管栄養など)が継続的に必要/寝たきりに近い状態/認知症の診断がまだない/親を遠方から呼び寄せたい

「ずっといられる」とは限らない

グループホームで最も注意したいのが、入居後に退去を求められるケースがあることです。次のような場合が典型です。

  • 医療的ケアが必要になった:グループホームは看護職員の配置が義務ではなく、対応できる医療行為は限られます
  • 身体状況が重度化した:寝たきりに近くなり、共同生活への参加が難しくなった場合
  • 長期入院した:入院が数か月に及ぶと契約終了となる事業所があります
  • 他の入居者との共同生活が困難になった:暴力行為などがある場合

したがって見学時には、「どういう状態になったら退去をお願いすることになりますか」「看取りまで対応していますか」「過去に退去された方はどこへ移りましたか」の3つを必ず質問してください。退居者の行き先は、その事業所の対応力を最もよく表す情報です(見学チェックリスト)。

近年は看護職員を配置し、看取りまで対応する事業所も増えています。契約書の退去条件は必ず確認しましょう(入居契約前のチェックポイント)。

探し方と申し込み

  1. 担当ケアマネジャーに相談する:地域の事業所の空き状況や評判を把握しています(ケアマネジャーの探し方
  2. 市区町村の介護保険窓口・地域包括支援センターで一覧をもらう:地域密着型なので、自治体が事業所リストを持っています
  3. 介護サービス情報公表システムで比較する:定員、職員1人当たり利用者数、職員の資格・経験年数、看護職員数、退居者数と行き先などが公表されています
  4. 見学・面談:本人と一緒に訪問し、雰囲気と本人の反応を確認します

1ユニット5〜9人と小規模なため空きが出にくく、待機が発生することも珍しくありません。複数の事業所に申し込んでおくのが現実的です。

よくある質問

Q. 認知症が進行したら、結局は特別養護老人ホームに移ることになりますか?

A. 一概には言えません。認知症の進行だけであれば住み続けられる事業所が多く、問題になるのは身体面の重度化や医療的ケアの必要性です。看取り対応の実績がある事業所を選んでおくと、住み替えのリスクを減らせます。特別養護老人ホームとの比較はこちらの記事をご覧ください。

Q. 費用が特別養護老人ホームより高いのはなぜですか?

A. グループホームには所得に応じた居住費・食費の減額制度がないためです。少人数で職員配置が手厚いぶん、コストが利用者負担に反映されやすいという面もあります。年金額との兼ね合いで難しい場合は、特別養護老人ホームとの併願も検討しましょう。

Q. 見学時、本人を連れて行くべきですか?

A. できれば一緒に行くことをおすすめします。認知症があっても、場の雰囲気や職員との相性は本人が感じ取ります。ただし「ここに入るかもしれない」と伝えると混乱する場合もあるため、伝え方は事前にケアマネジャーや事業所と相談しておくとよいでしょう。

まとめ:条件は厳しいが、認知症ケアの専門性は高い

グループホームは、認知症の診断・要支援2または要介護1以上・住民票が同じ市区町村という3条件がそろって初めて検討できる住まいです。そのぶん、少人数・手厚い職員配置による認知症ケアの専門性は高く、環境の変化に弱い方には有力な選択肢になります。

選ぶ際は「どうなったら退去になるのか」を必ず確認すること。認知症の親の住まい探しは、家族会議で方針を共有してから動くと、判断がぶれません。

参考にした主な資料