離れて暮らす親が心配になったとき、多くの人が「見守りサービス」を検索します。

センサー、カメラ、緊急通報ボタン、駆けつけサービス——たくさんの選択肢が出てきて、どれを選べばよいか分からなくなります。

ここで、選ぶ前に押さえておきたい視点があります。

異変を検知したあと、誰が家に行くのか。

実はこれ、全国の自治体が最も苦慮している点でもあります。総務省の調査で明らかになっています。

この記事では、総務省行政評価局の全国調査をもとに、見守りの仕組みそのものを整理します。

※当サイトは見守りサービスの紹介や仲介を行っていません。特定の商品・事業者を勧める記事ではなく、公的な調査結果と選び方の視点を整理したものです。

まず知っておきたいこと

総務省行政評価局の報告書に、こういう一文があります。

「見守り活動について、どのようなものが位置付けられるか我が国の法令において明確にしたものはない」(総務省行政評価局)

「見守り」に法律上の定義はありません。

つまり——同じ「見守りサービス」でも、中身はまったく違うということです。1日1回の電話も、24時間のセンサー監視も、同じ名前で呼ばれます。

だからこそ、名前ではなく中身を確認する必要があります。

見守りには大きく2つの型がある

総務省の調査は、自治体が行っている見守り活動を分類しています。

① 訪問による見守り

民生委員、社会福祉協議会、地域包括支援センター等が対面で生活の状況を把握する取組です。

担い手は行政関係者だけではありません。調査では、次のような取組が挙げられています。

  • 民生委員、社会福祉協議会、地域包括支援センター役割分担・連携
  • 自治会等、地域住民との連携
  • 民間事業者等(郵便局、ガス事業者、新聞販売店、地域の商店、コンビニ事業者等)が異変に気付いた場合に連絡・通報
  • 配食・食材配達に併せて安否確認

新聞販売店やガス事業者が見守りの担い手になっている——これは知られていません。すでに家に来ている人たちが、異変に気づける立場にあります。

② デジタルツールによる見守り

調査では、次の4種類が挙げられています。

種類 内容
センサー 室内に設置した温度・湿度・照度・人の動きを感知するセンサーで異変を察知。設置事業者へ連絡が入る
ロボット・タブレット 本人の姿の確認や会話ができ、日常生活の状況等が把握できる
電話 利用者が電話で健康状態を発信し、見守りセンター(社会福祉協議会)が確認する
緊急通報装置 発作、急病、事故等の際、ボタンを自ら押すだけで貸与事業者等と通話できる

注目したいのが緊急通報装置の「ボタンを自ら押すだけで」という部分です。裏を返せば——押せない状態のときは機能しません。センサー型と組み合わせる意味が、ここにあります。

【最重要】誰が駆けつけるのか

ここがこの記事の核心です。総務省の調査は、自治体の課題としてはっきり書いています。

デジタルツールで異変を察知した際、誰が見守り対象者の自宅に出向いて安否確認をするか…について苦慮している地方公共団体がみられた」(総務省行政評価局)

センサーは「気づく」ところまでしかできません。そこから先、実際に家に行く人が必要です。

調査で挙げられている駆けつけの担い手は2種類です。

駆けつける人 特徴
緊急通報装置の貸与事業者・センサー設置事業者 事業者が対応する。費用に含まれるか要確認
行政機関や見守り協力員(親族、近隣住民、民生委員等) あらかじめ登録した人が向かう

サービスを検討するときは、「異変を検知したら、その後どうなりますか」と必ず聞いてください。

  • 誰が向かうのか(事業者か、登録した親族か)
  • 費用は基本料金に含まれるのか、駆けつけごとの追加料金か
  • どのくらいの時間で到着するのか
  • 夜間・休日も同じ対応か

鍵をどうするか

見落とされがちですが、調査では実務上の工夫として、こんな内容まで挙げられています。

「見守り協力員等が高齢者の居宅内に立ち入る際、住宅等の一部に毀損が生じても修復責任を問わないことについて同意を得るもの」
見守り協力員に鍵を預けるもの」(総務省行政評価局)

駆けつけても、家に入れなければ確認できません。鍵を預けるのか、緊急時に窓やドアを壊すことを了承しておくのか——先に決めておかないと、その場で動けません。

遠方に住んでいる場合は特に重要です(遠距離介護のコツ)。

組み合わせるという発想

調査では、自治体からこういう意見が多く聴かれたとされています。

人による見守り活動とデジタルツールを活用した見守り活動を組み合わせることが重要との意見が多く聴かれた」(総務省行政評価局)

どちらか一方ではありません。

たとえば——

  • センサーで日常の異変に気づく
  • 緊急通報装置で本人からも発信できるようにする
  • 配食サービスで週に数回、人の目が入る
  • デイサービスで定期的に専門職が状態を見る

介護保険サービスを使っていること自体が、見守りとして機能します(在宅介護とは?使える6つのサービス)。

「見られたくない」という気持ち

もうひとつ、調査で拾われている視点があります。

デジタルツールの活用によって、「近隣住民に見られたくない」という高齢者のニーズに応えられるのではないか(総務省行政評価局)

本人が近所の人の訪問を嫌がる場合、センサー型のほうが受け入れられることがあります。逆に、機械に見張られるのが嫌だという方には、人による見守りが向きます。

本人の性格と希望を確認してから選んでください。嫌がられれば、電源を抜かれてしまいます。

まず自治体に確認する

民間サービスを契約する前に、お住まいの自治体に何があるかを確認してください。

総務省の調査が示すとおり、多くの自治体が独自の見守り活動を行っています。緊急通報装置の貸与、センサーの設置、配食に伴う安否確認など、所得等の条件によっては低額または無料で利用できることがあります。

公的な検索ツールがある

厚生労働省の介護サービス情報公表システムには、介護保険サービスとは別に「生活関連情報」が掲載されています。

掲載されているサービス
見守り・安否確認——地域の自治会や町内会、民間事業者等によるもの
配食(+見守り)——訪問時に安否確認や見守りも兼ねたサービス
家事援助/外出支援/通いの場/介護者支援/多機能型拠点

市町村が設置主体となって情報を管理しています。地域にどんな選択肢があるかを調べる出発点になります。

あわせて地域包括支援センターに相談すれば、その地域で実際に使われている仕組みを教えてもらえます。

もうひとつの「見守り」

安否確認とは別に、消費者トラブルから守るという意味の見守りもあります。

ひとり暮らしの高齢者は、悪質商法や特殊詐欺の標的になりやすい立場です。不審な訪問販売、高額な契約、身に覚えのない請求——こうした変化に気づけるのも、見守りの役割です。

兆候の見つけ方は 親の物忘れが増えたと感じたら で扱っています。消費者ホットライン「188」も覚えておいてください。

よくある質問

カメラを設置してもよいですか?

本人の同意を得てください。知らないうちに設置されていたと分かれば、信頼関係が損なわれます。

玄関やリビングなど場所を限定する、映像を常時見るのではなく異変時のみ確認する、といった配慮で受け入れられることがあります。

費用の相場はどのくらいですか?

サービスの内容によって大きく異なるため、金額だけでの比較は避けてください。

確認すべきは「何が含まれているか」です。月額に駆けつけ費用が含まれるのか、通報1回ごとに追加料金が発生するのかで、実際の負担は変わります。

介護保険は使えますか?

見守りサービスは原則として介護保険の対象外(実費)です。ただし自治体独自の助成がある場合があります(介護用品・サービスの選び方)。

一方、介護保険サービスを利用すること自体が見守りになります。訪問介護やデイサービスの利用状況から、専門職が変化に気づいてくれます。

夜間が心配です

夜間に対応する介護保険サービスもあります(認知症で夜眠らない・夜間に落ち着かないとき)。夜間対応型訪問介護には、転落時などの随時対応も含まれます。

転倒が心配で導入を考えています

緊急通報装置は転倒時に有効ですが、そもそも転ばない環境をつくるほうが先です。

住宅内で転ぶ場所の1位は居室・寝室でした(高齢者が家で転ぶ場所1位は「居室・寝室」)。床の片づけと足元灯は、今日からできます。

本人が導入を嫌がります

「監視されている」と受け取られると拒否されます。「何かあったときにすぐ助けが呼べる」という伝え方のほうが受け入れられやすくなります。

また自治体によっては公費で試用できる期間を設けている例もあると報告されています。まず試してみる、という入り方もあります。

まとめ

  • 「見守り」に法令上の定義はない。同じ名前でも中身が違う(総務省行政評価局)
  • 大きく訪問型デジタルツール型に分かれる
  • 訪問型には郵便局・ガス事業者・新聞販売店・コンビニ等が担うものもある
  • デジタル型はセンサー/ロボット・タブレット/電話/緊急通報装置
  • 最重要は「誰が駆けつけるか」。全国の自治体が苦慮している課題
  • 鍵をどうするかを先に決めておく
  • 人とデジタルの組み合わせが重要という意見が多い
  • まず自治体の制度を確認する。「生活関連情報」で地域の選択肢を探せる

見守りサービスは、機器を置いて終わりではありません。異変に気づいたあと、誰がどう動くか——そこまで決まって、はじめて仕組みになります。

そして、その多くはお金を払う前に、地域に用意されているかもしれません。

参考にした主な資料

※制度やサービスの内容は自治体・事業者によって異なります。実際の利用にあたっては、お住まいの市区町村または各事業者にご確認ください。