介護食を買おうと売り場に立つと、たいてい混乱します。

「やわらか」「かまなくてよい」「区分3」「舌でつぶせる」——いろいろな表示が並んでいて、どれが親に合うのか分からない。

実はこれ、複数の規格が併存していることが原因です。そこで国が整理したのがスマイルケア食という枠組みでした。

色(青・黄・赤)と数字(0〜5)で選ぶ。
そして——「介護食=やわらかい食事」ではありません。

この記事では、農林水産省の資料をもとに表示の読み方を整理します。

※当サイトは特定の商品を紹介・販売していません。噛む力・飲み込む力に不安がある場合は、必ず医師・歯科医師・管理栄養士等の専門職にご相談ください。自己判断で食形態を決めることは危険です。

まず、3つの色

スマイルケア食は、目的別に3色のマークで分かれています。

マーク 対象
健康維持上、栄養補給を必要とする方向けの食品
噛むことに問題がある方向けの食品
飲み込むことに問題がある方向けの食品

「噛む」と「飲み込む」は、別の問題として分けられています。ここが最初の分岐点です。

青マークは「やわらかさ」の話ではない

見落とされがちなのが青マークです。これは食べやすさではなく栄養の基準です。

【エネルギー】100kcal以上(100g又は100ml当たり)
【たんぱく質】100g(100ml)当たりのたんぱく質含有量が8.1g(4.1g)以上、又は、100kcal当たりのたんぱく質含有量が4.1g以上(農林水産省)

噛めるし飲み込めるけれど、量を食べられない——そういう方のための区分です。

当サイトで繰り返し扱ったとおり、高齢者は食べすぎより低栄養が問題になり、低栄養はサルコペニアから転倒・骨折につながります(高齢の親が食べない高齢者が家で転ぶ場所1位は「居室・寝室」)。

「食が細い」だけでも、介護食の対象になりえます。

数字は0から5まで

黄マークと赤マークには、さらに細かい分類があります。数字が小さいほど、噛まずに飲み込みやすいという並びです。

分類 基準

(噛むことに問題)
5 容易にかめる食品
4 歯ぐきでつぶせる食品
3 舌でつぶせる食品
2 かまなくてよい食品

(飲み込むことに問題)
2 許可基準Ⅲ
1 許可基準Ⅱ
0 許可基準Ⅰ

「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」という表現は、そのまま基準の名前です。パッケージでこの言葉を見かけたら、それは規格に沿った表示だということになります。

黄と赤で基準の性格が違う

同じ数字が並んでいますが、認められる条件は異なります。

  • 黄マーク——「そしゃく配慮食品の日本農林規格」に適合し、JASマークが付されているものに限る
  • 赤マーク——特別用途食品の規格を満たし、「えん下困難者用食品」たる表示の許可を得たものに限る

赤マークは、国の表示許可を受けた食品だけが名乗れます。飲み込みの問題は誤嚥に直結するため、基準が厳格になっています。

飲み込みに不安がある場合は、商品を選ぶ前に専門職の評価を受けてください。合わない形態は、かえって危険になります(在宅介護の食事・入浴・排泄の基本)。

親はどこに当てはまるか

農林水産省の検討会報告は、対象となる方を4つのグループに整理しています。

食べる機能 栄養状態
A 問題なし 問題なし(体重の急な減少がない)
B 問題なし 不良
C 問題あり 工夫により良好
D 問題あり 不良

B・C・Dが対象とされ、Aであっても「食機能の低下や生活環境の変化等により、B や C、更に D に移行するおそれがある方については対象となり得る」とされています。

具体例も挙げられています。

「日々の生活でストレスを感じることなどを契機として、食欲が落ちた、体重が減ってきたなど、自分の健康に少し不安を持ち始めた方なども広く対象となり得る」(農林水産省)

「まだ介護食を使うほどではない」と考えている段階が、実は入口だということです。

「食べることに関して問題がある」の定義

報告書は、この状態を2つに定義しています。

  1. 噛むこと、飲み込むことという食べる方の身体的機能に問題があること
  2. 現在でも低栄養の状態にあるか又は今後低栄養に陥る危険性が高いことにより、機能障害を起こしたり健康状態を悪化させる懸念があること

やはり「噛めない・飲み込めない」だけでなく「栄養が足りない」も含まれています。

【重要】治療食は対象外

注意すべき線引きがあります。

医師等の判断のもとに提供される治療食や病院食については対象から外すことが適当である」(農林水産省)

病気の治療のために食事の指導を受けている場合、その指示が優先します。

腎臓病、糖尿病、心疾患などで食事療法を受けている方は、市販の介護食を自己判断で取り入れないでください。主治医または管理栄養士に確認してください。

選ぶときの順番

整理すると、こうなります。

  1. 食事療法の指導を受けていないか確認する——受けているならその指示が優先
  2. 問題は「噛む」か「飲み込む」か「量」かを見分ける
  3. 噛む力に不安 → 黄マーク。段階は5→4→3→2
  4. 飲み込みに不安 → 赤マーク専門職の評価を受けてから
  5. 量が食べられない → 青マーク

農林水産省も「食べることについて気になることがあれば、まずは専門職(医師、歯科医師、管理栄養士等)にご相談ください」と明記しています。

誰に相談すればよいか分からない場合は、担当のケアマネジャーに伝えてください。介護保険には、管理栄養士等が自宅を訪問して助言する仕組みもあります。

よくある質問

売り場で見る「区分1〜4」の表示とは違うのですか?

店頭では、業界団体が定めた別の規格の表示も使われています。数字の付け方が異なるため、規格をまたいで数字だけを比較しないでください。

数字よりも「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」といった言葉のほうが、状態を判断しやすいと思います。

家庭で作るときの参考になりますか?

「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」という基準は、家庭で調理するときの目標としても使えます。

市販品を一度使ってみて、そのやわらかさを基準に家庭の食事を合わせるという方法もあります(高齢者の宅配弁当でも、配食が家庭の食事の参考になると紹介されています)。

とろみ剤はどう選べばよいですか?

とろみの付け方は飲み込みの状態によって適切な濃度が異なります。濃すぎても薄すぎても危険です。

必ず専門職の指示を受けてください。自己判断で調整することは避けてください。

介護保険で買えますか?

介護食は介護保険の対象外(実費)です。福祉用具のようなレンタルや購入費の支給はありません。

介護保険で使えるもの・使えないものの整理は 介護用品・サービスの選び方 をご覧ください。

本人が嫌がります

見た目が変わることへの抵抗があります。すべてを介護食にせず、食べにくいものだけ置き換えるという使い方もできます。

食欲そのものが落ちている場合は、別の原因が考えられます(高齢の親が食べない)。

むせるようになってきました

食品を変える前に受診してください。むせが増えているのは、飲み込む機能の変化のサインである可能性があります。

誤嚥は肺炎につながることがあり、窒息事故は半数以上が入院を要するという統計もあります(高齢の親が食べない)。

まとめ

  • 国の枠組み「スマイルケア食」は、青(栄養補給)・黄(噛む)・赤(飲み込む)の3色
  • 青マークは栄養の基準(エネルギー100kcal以上など)。やわらかさの話ではない
  • 数字は0〜55=容易にかめる/4=歯ぐきでつぶせる/3=舌でつぶせる/2=かまなくてよい
  • 赤マークは「えん下困難者用食品」の表示許可を得た食品に限る
  • 対象は噛む・飲み込むの問題だけでなく、低栄養やその危険性がある方も含む
  • 「食欲が落ちた、体重が減ってきた」段階から対象になりうる
  • 医師の指導による治療食・病院食は対象外。指示が優先
  • 迷ったら医師・歯科医師・管理栄養士に相談

介護食売り場で迷うのは、知識が足りないからではありません。規格が複数あるからです。

色で目的を決め、言葉(歯ぐきでつぶせる、舌でつぶせる)で段階を選ぶ。まずはそこからで十分です。

参考にした主な資料

※規格や基準は改正されることがあります。噛む力・飲み込む力に関わる判断は医療・栄養の専門職が行うものです。実際の選択にあたっては、必ず主治医・歯科医師・管理栄養士等にご相談ください。