もの忘れ外来の受診|当日の流れ・検査・かかる時間と家族の準備
受診したほうがいい——そう判断できても、次の疑問が出てきます。
何科に行けばいいのか。どんな検査をするのか。どれくらい時間がかかるのか。
「半日で終わると思っていたら、丸一日かかった」「本人だけで行かせたら、話が進まなかった」——事前に知っていれば防げることが、いくつもあります。
この記事では、受診を決めたあとの実務を整理します。受診すべきかどうかの判断は 親の物忘れが増えたと感じたら をご覧ください。
※本記事は一般的な情報の整理であり、診断・治療の代わりになるものではありません。実際の流れや費用は医療機関によって異なります。
受診をすすめる目安
国立長寿医療研究センターは、家族が答えるチェックリストのうち、特に次の5項目に該当する場合、早めの受診をすすめています。
「同じことを言ったり聞いたりする」
「薬の管理ができなくなった」
「以前はあった関心や興味が失われた」
「時間や場所の感覚が不確かになった」
「幻覚を見る」
——これらが該当する方は「早めに専門医療機関のもの忘れ外来などを受診されることをお勧めします」(国立長寿医療研究センター)
注目したいのが「薬の管理ができなくなった」です。もの忘れそのものより、生活の中でできなくなったことが判断材料になります。
また「以前はあった関心や興味が失われた」は、もの忘れとは違う変化です。趣味をやめた、外に出なくなった——これも受診の目安に入っています。
【当日】初診は半日がかりになる
ここが最も知っておくべき点です。国立長寿医療研究センターの例で見てみます。
流れ
- 問診票の記入(本人・家族)
- 診察前の検査——専門スタッフによる身体機能・認知機能検査(約1時間)
- 診察——医師による病状・日常生活についての聞き取り(約30分)
- 診察後の検査(必要に応じて実施)
そして重要な指示があります。
初診時には診察前に検査があるため、約1時間前にお越しください(国立長寿医療研究センター)
診察の予約時間に行けばよい、ではありません。その前に検査があります。
診察前検査に約1時間、診察に約30分。ここに待ち時間と診察後の検査が加わるため、半日は空けておくつもりで予定を組んでください。
完全予約制
もの忘れ外来は完全予約制としている医療機関が一般的です。当日ふらりと行っても受けられません。
予約が数週間先になることもあるため、受診すると決めたら早めに電話してください。
どんな検査をするのか
検査は複数あり、それぞれに時間がかかります。
| 検査 | 内容 | 所要時間 |
|---|---|---|
| 神経心理検査 | 記憶力・判断力・言語能力の詳細な検査 | 約1時間 |
| 脳MRI検査 | 脳の断面を撮影し、萎縮や脳梗塞などがないかを調べる | 約40分 |
| 脳血流検査(スペクト) | 検査薬を注射し、脳の活動度を撮影する | 約1時間 |
| 血液検査・心電図・レントゲン | 全身の状態を確認 | — |
すべてを初日に行うとは限りません。画像検査は別日になることもあり、結果が出そろって診断がつくまでに複数回の受診が必要になるのが一般的です。
「1回行けば結果が分かる」と思っていると、予定が狂います。
なぜ血液検査までするのか
もの忘れの原因は認知症だけではありません。治療によって改善しうる別の病気が隠れていることがあり、それを見分けるために全身の検査が行われます。
この点は 親の物忘れが増えたと感じたら でも扱いました。早く受診する理由のひとつが、ここにあります。
【重要】家族が一緒に行く
本人だけで受診させようとする方がいますが、これは避けてください。
「病状について詳しくお伺いいたしますので、ご家族と一緒に来院をお願いします」(国立長寿医療研究センター)
医療機関の側から、家族の同伴を求めています。
理由は明確です。本人は自分の変化を正確に説明できないことがあります。「困っていない」と答えてしまうことも珍しくありません。
実際、問診票も「本人の状態をよく知るご家族にお答え頂いて診察の参考に」する形になっています。家族が持っている情報が、診断の材料そのものです。
伝えることをメモしていく
診察時間は約30分。その場で思い出しながら話すには短すぎます。
- いつ頃から気になり始めたか
- どんな場面で困っているか(具体的なエピソード)
- できなくなったこと(薬、料理、金銭管理、運転など)
- 性格や興味の変化
- 身体の変化(歩き方、転倒、失禁など)
本人の前では言いにくいことは、メモにして渡してください。これは受診全般で使える方法です。
持っていくもの
- お薬手帳——服用中の薬は必ず伝えます。薬が原因で症状が出ていることもあります
- 紹介状——かかりつけ医がいれば「可能であれば」持参が推奨されます
- 健康保険証・マイナ保険証
- これまでの検査結果があれば一式
何科を受診するか
「もの忘れ外来」を掲げている医療機関が分かりやすい選択肢です。ない場合は、まずかかりつけ医に相談してください。
かかりつけ医から専門医療機関へ紹介してもらう流れが、最もスムーズです。日頃の様子を知っている医師が間に入ることで、本人の抵抗感が小さくなるという利点もあります。
どこに行けばよいか分からない場合、地域包括支援センターでも地域の医療機関を案内してもらえます。家族だけで先に相談できる窓口については 親の物忘れが増えたと感じたら で扱っています。
費用について
認知症の診断に関わる検査は医療保険が適用されます。自己負担は年齢と所得に応じて1〜3割です。
ただし——
- 検査の種類と回数によって金額が変わります
- 画像検査(MRI・脳血流検査)を行うかどうかで大きく変わります
- 初診料・検査料のほか、複数回受診すればその都度かかります
具体的な金額は、予約時に医療機関へ確認するのが確実です。「どのような検査を予定していて、おおよそいくらになるか」と聞けば教えてもらえます。
医療費が高額になった場合の払い戻しについては 親が倒れたらすぐやること で高額療養費制度を扱っています。
診断がついたあと
受診はゴールではなく、出発点です。診断後にやることがあります。
- 介護保険の申請——要介護認定を受ければサービスが使えます。主治医意見書を書いてもらう医師が必要なので、受診しておくことが前提になります
- 接し方を知る——認知症の親への接し方
- 今後の見通しを聞く——医師に率直に質問してかまいません
- 本人の意思を確認しておく——判断能力があるうちにしかできないことがあります(親のお金の管理)
診断名がつくことは、支援を受ける入口でもあります。
よくある質問
本人が受診を拒みます
最も多い相談です。無理に連れて行こうとすると関係が悪くなり、かえって遠回りになります。
「健康診断」「かかりつけ医の勧め」といった入り方や、家族だけで先に地域包括支援センターに相談する方法があります。詳しくは 親の物忘れが増えたと感じたら をご覧ください。
結果はその日に分かりますか?
検査内容によります。画像検査を行う場合、別日になることも、結果説明がさらに後日になることもあります。
予約時に「診断がつくまで何回くらいかかりますか」と確認しておくと、予定が立てやすくなります。
遠方に住んでいます
家族の同伴が求められるため、帰省の日程に組み込む必要があります。初診は半日かかることを踏まえて予定を組んでください。
同伴が難しい場合は、事前にメモを用意して本人に持たせる、電話での情報提供が可能か医療機関に相談する、といった方法があります(遠距離介護のコツ)。
認知症ではないと言われました
もの忘れの原因は多岐にわたります。結果として認知症でなかったのなら、それは受診の成果です。
気になる状態が続く場合は、時期をおいて再度受診することも選択肢になります。医師に「どのくらいの間隔で様子を見ればよいか」を確認してください。
診断がつくのが怖いです
その気持ちは自然なものです。ただ、診断がつかなければ使えない支援があります。
介護保険サービス、専門職の関わり、家族の会——いずれも診断や認定が入口になります。知らないまま抱え込む期間が長いほど、家族の負担は大きくなります(介護疲れ・介護うつを防ぐには)。
夜間の症状が心配です
受診時に必ず伝えてください。急に始まった夜の症状は、身体状態や薬が関係していることがあります(認知症で夜眠らない・夜間に落ち着かないとき)。
まとめ
- 受診の目安は同じことを言う・薬の管理ができない・関心の喪失・時間や場所の感覚・幻覚の5項目(国立長寿医療研究センター)
- 初診は半日がかり。診察前検査に約1時間、診察に約30分
- 予約時間より前に到着する必要がある。完全予約制が一般的
- 検査は神経心理検査(約1時間)・脳MRI(約40分)・脳血流検査(約1時間)など
- 診断がつくまで複数回の受診が必要になることが多い
- 「ご家族と一緒に来院を」と医療機関側が求めている
- 家族が持つ情報が診断の材料。メモを用意していく
- お薬手帳は必須。薬が症状に影響していることがある
受診は、身構えるほど特別なことではありません。ただし、行けば即日で答えが出るものでもありません。
半日空けて、メモを持って、家族と一緒に行く。この3つを押さえておけば、1回目の受診がむだになりません。
参考にした主な資料
※受診の流れ・所要時間・検査内容は医療機関によって異なります。本記事は国立長寿医療研究センターの例をもとにした一般的な整理であり、診断・治療の代わりになるものではありません。実際の受診にあたっては、医療機関にご確認ください。