介護にかかったお金は、確定申告で医療費控除の対象になります。

ただし——払った介護費用の全部が対象になるわけではありません。

ここを誤解したまま申告すると、本来引けたものを見逃したり、逆に対象外のものを入れてしまったりします。実は使ったサービスの種類によって、扱いがはっきり3つに分かれます。

デイサービスは対象になるのか。特別養護老人ホームの費用はどうか。おむつ代は。
——答えは、いずれも「条件による」です。

この記事では、国税庁が示している区分をそのまま整理します。

※本記事は2026年8月時点の情報をもとにした一般的な解説です。個別の判断や具体的な申告方法については、税務署または税理士にご相談ください。

まず、医療費控除のしくみ

1年間に支払った医療費が一定額を超えると、その分だけ課税対象の所得が減り、税金が戻ります。

計算式は次のとおりです。

控除額 (実際に支払った医療費の合計額 − 保険金などで補填される金額)− 10万円
所得が少ない場合 その年の総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく総所得金額等の5%
上限 最高200万円

そして介護で特に重要なのが、次の点です。

自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費」(国税庁)

親のために子が支払った費用も、生計を一にしていれば子の医療費控除に含められます。同居していなくても、生活費を仕送りしているなど実態があれば該当しうる、というのが「生計を一にする」の考え方です。

親の所得が低く税金をほとんど払っていない場合、子の側で申告したほうが戻る額が大きくなることがあります。

【在宅】サービスは3つに分かれる

ここがこの記事の本題です。国税庁は居宅サービスを3つに区分しています。

① それだけで対象になるサービス(医療系)

サービス名
訪問看護/介護予防訪問看護
訪問リハビリテーション/介護予防訪問リハビリテーション
居宅療養管理指導(医師等による管理・指導)
通所リハビリテーション(医療機関でのデイサービス)
短期入所療養介護(ショートステイ)

いずれも医療の性格を持つサービスです。これらは単独で使っていても対象になります。

② ①と併せて使う場合にだけ対象になるサービス(福祉系)

サービス名
訪問介護(ホームヘルプサービス)※生活援助中心型を除く
訪問入浴介護
通所介護(デイサービス)
小規模多機能型居宅介護
短期入所生活介護(ショートステイ)

これが最も見落とされる区分です。

デイサービスだけを使っている場合は対象外。しかし訪問看護も併せて使っていれば、デイサービス分も対象になります。

同じ「ショートステイ」でも、短期入所療養介護(医療型)は単独で対象、短期入所生活介護は併用時のみという違いがあります。名前が似ているので、利用票で確認してください。

③ 対象にならないサービス

サービス名
訪問介護(生活援助中心型)
認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム
福祉用具貸与
地域支援事業の生活支援サービス

同じ訪問介護でも、身体介護中心なら②、生活援助中心型なら③と分かれます。この違いは 訪問介護でできること・できないこと で解説しています。

判定は「サービス利用票」で確認できる

自分がどれを使っているか分からない——そんなときの確認方法も示されています。

医療系サービスの判定は「サービス利用票」の記載で確認(国税庁)

ケアマネジャーから毎月渡される書類です。判断に迷ったら、ケアマネジャーに「医療費控除の対象になるサービスは入っていますか」と聞くのが早道です。

【施設】種類によって控除額が変わる

施設に入所している場合、施設の種類で控除できる額が変わります。

施設 控除対象
指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム
指定地域密着型介護老人福祉施設
自己負担額の2分の1
介護老人保健施設
指定介護療養型医療施設
介護医療院
自己負担額の全額

対象となる費用は、いずれも介護費・食費・居住費です。

特別養護老人ホームが2分の1にとどまるのに対し、介護老人保健施設は全額。同じ「施設に入っている」でも、戻る額が倍ちがうことになります。

対象外になるもの

日常生活費と特別なサービスの費用は対象外です。国税庁は日常生活費を次のように説明しています。

理美容代やその他施設において提供される便宜のうち、日常生活においても通常必要となるもの」(国税庁)

ただし例外があり、介護老人保健施設等の個室等の特別室の使用料のうち、診療または治療を受けるためにやむを得ず支払うものは対象になります。

領収証を見れば分かる

計算に悩む必要はありません。

「これらの施設が発行する領収証には、基本的に医療費控除の対象となる金額が記載されることとなっています」(国税庁)

施設の領収証には、控除対象額があらかじめ書かれています。自分で2分の1を計算する必要はありません。捨てずに1年分そろえてください。

おむつ代は「証明書」があれば対象

在宅で介護をしていると、おむつ代は無視できない金額になります。

おむつ代は「医師等が発行する『おむつ使用証明書』がある場合に限り」対象(国税庁)

領収書だけでは足りません。医師の証明書が必要です。

これは受診時に依頼するものなので、あとから1年分をまとめて用意しようとすると間に合わないことがあります。おむつを使い始めたら、早い段階で主治医に相談してください。

おむつには自治体の助成制度がある場合もあります(介護用品・サービスの選び方)。

【重要】高額介護サービス費を受けたら差し引く

見落とすと申告誤りになるのが、この点です。

高額介護サービス費の払戻を受けた場合は差し引く必要がある(国税庁)

医療費控除は「実際に負担した額」に対するものです。高額介護サービス費で戻ってきたお金は、負担していないことになります。

先ほどの計算式にある「保険金などで補填される金額」にあたるもの、と考えてください。

戻ってきた分を引かずに申告してしまうと、控除額を多く計上することになります。高額介護サービス費は初回申請後に自動で振り込まれるため、気づかないうちに入金されていることがあります。通帳を確認してください。

確定申告のやり方

用意するもの

  • 医療費控除の明細書——確定申告書に添付します
  • 介護サービスの領収証(1年分)
  • 施設の領収証(控除対象額が記載されています)
  • おむつ使用証明書(該当する場合)
  • 高額介護サービス費など戻ってきた金額が分かるもの

医療保険者から医療費通知が届いている場合は、明細書の記入を省略して添付することもできます。

いつ申告するか

その年の1月1日から12月31日までに支払った分を、翌年の確定申告で申告します。

会社員の方で確定申告をしていない場合でも、医療費控除だけのために申告することができます。過去の分についてもさかのぼって申告できる期間があるため、「去年やっていなかった」という場合は税務署に相談してください。

よくある質問

親と別居していても、子の申告に入れられますか?

「生計を一にする」かどうかで判断されます。同居が絶対条件ではありません。仕送りなどで生活を支えている実態があれば該当しうるとされています。

ただし個別の事情によるため、判断に迷う場合は税務署に確認してください。

きょうだいで分けて申告できますか?

同じ費用を二重に申告することはできません。誰が支払い、誰の申告に入れるかを事前に決めておいてください。

介護費用の負担と記録の残し方は 兄弟姉妹の介護分担 で扱っています。あとからもめる原因になりやすい部分です。

交通費は対象になりますか?

通院のための交通費は、医療費控除の対象になる場合があります。ただし自家用車のガソリン代や駐車料金の扱いなど、細かい条件があります。

介護のための帰省交通費は対象外です(遠距離介護のコツ)。

デイサービスしか使っていません

通所介護(デイサービス)単独では対象になりません。医療系サービスと併せて利用している場合に対象となります。

ただし同じ「デイ」でも通所リハビリテーション(医療機関でのデイサービス)は単独で対象です。どちらを利用しているか、デイサービスの記事とサービス利用票で確認してください。

10万円を超えていない気がします

総所得金額等が200万円未満の場合、基準は10万円ではなく総所得金額等の5%です。年金収入が中心の親本人が申告する場合、この基準に該当することがあります。

また医療費控除は家族分を合算できるため、親の介護費用と自分や配偶者の通院費を合わせると超えることもあります。

まとめ

  • 介護費用は医療費控除の対象になるが、サービスの種類で扱いが3つに分かれる
  • 訪問看護・訪問リハ・通所リハ・短期入所療養介護などは単独で対象
  • デイサービスや訪問介護は、医療系サービスと併用している場合のみ対象
  • 訪問介護でも生活援助中心型は対象外。グループホーム・福祉用具貸与も対象外
  • 施設は特別養護老人ホームが2分の1、介護老人保健施設等は全額
  • 施設の領収証には控除対象額が記載されている
  • おむつ代は医師の「おむつ使用証明書」があれば対象
  • 高額介護サービス費で戻った分は差し引く
  • 生計を一にしていれば、子の申告に含められる

介護のお金の制度は申請主義です。医療費控除も、黙っていて戻ってくるものではありません。

まずは領収証を1年分そろえることから始めてください。それだけで、申告できるかどうかの見当がつきます。

参考にした主な資料

※税制は改正されることがあります。また個別の事情によって取扱いが異なる場合があります。実際の申告にあたっては、必ず最新の情報を国税庁のサイトで確認するか、所轄の税務署・税理士にご相談ください。