介護が始まったとき、多くの家族が最初に不安になるのがお金です。

いくらかかるのか。そして、いつまで続くのか。

終わりが見えないまま出費が続く——この不安の正体は、金額そのものより「見通しが立たないこと」にあります。

そこで、実際に介護を経験した人たちの調査結果から、費用と期間の目安を整理します。

平均で 4年7か月、月々 9.0万円
そして在宅と施設では、月額に2.6倍の開きがあります。

※本記事で紹介する数値は、生命保険文化センターの調査による平均値です。実際の費用は状態・地域・利用するサービスによって大きく異なります。目安としてご覧ください。

介護は平均4年7か月続く

まず期間から見ます。

「介護を行った期間(現在介護を行っている人は、介護を始めてからの経過期間)は、平均55.0カ月(4年7カ月)になりました。4年を超えて介護した人は約4割となっています」(生命保険文化センター)

4年7か月。この数字をどう受け止めるかは人によりますが、「数か月で終わるものではない」という前提だけは持っておく必要があります。

そして注意したいのは、これが平均だということです。4年を超えた人が約4割いる一方、短期間で終わった人もいます。「うちも4年7か月」ではなく、「長期化する可能性がある」と読むのが正しい使い方です。

だからこそ、最初から全力で走らないことが大切になります。介護する側が先に倒れてしまう例は少なくありません(介護疲れ・介護うつを防ぐには)。

費用は「最初」と「毎月」に分かれる

介護の出費は、性質の異なる2種類があります。

平均 中身
一時費用 47.2万円 住宅改造や介護用ベッドの購入費など
月々の費用 9.0万円 介護サービスの利用料など

一時費用は介護が始まった直後にまとまって出ていくのが特徴です。手すりの設置、段差の解消、介護用ベッド——生活の形を変えるための費用です。

ここで知っておきたいのが、この一時費用には公的な補助があるということです。

知らずに自費で工事や購入をしてしまうと、この47.2万円はもっと膨らみます。特に住宅改修は事後申請ができません。工事を始める前に、必ずケアマネジャーに相談してください。

総額はどのくらいになるのか

平均値どうしを組み合わせると、目安が見えてきます。

一時費用 47.2万円
月々の費用 × 期間 9.0万円 × 55.0か月 = 495万円
合計の目安 約540万円

あくまで平均値を掛け合わせた概算であり、誰かに実際に起きた金額ではありません。それでも「介護にはこの規模のお金が動く」という感覚をつかむには役立ちます。

この数字を見て慌てる必要はありません。大事なのは、次の2点です。

  • 一度に必要になるお金ではない——4年7か月かけて分散する
  • 親の年金と資産でまかなうのが原則——子が負担する前提で考えない

在宅と施設で2.6倍ちがう

月々の費用は、どこで介護するかで大きく変わります。

月額の平均
在宅 5.3万円
施設 13.8万円

その差、月8.5万円。年間では約100万円になります。

ただし、この数字だけで「在宅のほうが安いから在宅で」と決めるのは危険です。在宅の5.3万円には、家族が担っている労力が含まれていません。

家族が仕事を減らした、離職した、体調を崩した——これらはお金に換算されないだけで、確実にコストです。介護離職による収入減は、施設費用を上回ることさえあります(仕事と介護の両立)。

在宅を続けるか施設を検討するかの判断材料は 在宅介護とは?使える6つのサービスと限界の見極め方 にまとめています。

施設は種類で費用が変わる

施設の13.8万円も平均値です。実際には施設の種類で大きく変わり、特別養護老人ホームのような公的施設は入居一時金がなく月額も抑えられます。

種類別の相場は 老人ホームの費用相場まとめ で比較しています。

負担割合は所得で決まる

介護サービスを使ったときの自己負担は、一律ではありません。

「65歳以上(第1号被保険者)で、合計所得金額が160万円未満の人の自己負担は1割、160万円以上の人は2割、合計所得金額が220万円以上の人は3割」(生命保険文化センター)

2割・3割の方は、同じサービス量でも負担が2倍・3倍になります。ご自身の割合は「介護保険負担割合証」で確認できます。毎年7月頃に届く書類です。

使えるサービス量の上限(区分支給限度基準額)は要介護度で決まります。区分ごとの限度額は 要介護認定の区分早わかり表 をご覧ください。

負担を軽くする制度がある

平均値を見て不安になった方こそ、ここを読んでください。払いすぎた分が戻る制度があります。

制度 内容
高額介護サービス費 月の自己負担が上限(多くの方は44,400円)を超えた分が払い戻される
医療費控除 介護サービスの一部が確定申告で所得控除の対象になる
負担限度額認定 施設の食費・居住費が減額される(市町村民税非課税+預貯金要件)
高額医療・高額介護合算療養費 医療と介護の年間合計が上限を超えた分が払い戻される

これらはすべて申請が必要です。黙っていて自動的に適用されるものではありません。制度の全体像は 介護保険の仕組み で整理しています。

お金の話は、早めに家族で

費用の見通しが立つと、次に決めるべきは「誰のお金から出すか」です。

原則は親のお金でまかなうことです。子が自分の生活費や教育費を削って介護費用を負担すると、介護が長期化したときに共倒れになります。

そのためには、親の年金額・預貯金・保険の加入状況を把握しておく必要があります。本人の判断能力があるうちでなければ、口座の手続きが難しくなることも知っておいてください。

家族での話し合いの進め方は 介護が始まる前の家族会議、きょうだい間の費用分担と記録の残し方は 兄弟姉妹の介護分担 で扱っています。

よくある質問

平均より高くなるのはどんなときですか?

自己負担が2割・3割の場合、医療的ケアが多い場合、民間の有料老人ホームを選んだ場合などです。

逆に、市町村民税非課税世帯であれば各種の軽減制度が使えるため、平均を大きく下回ることもあります。

年金だけで足りますか?

在宅の平均5.3万円であれば、年金の範囲で収まるケースが多くなります。一方で施設の13.8万円となると、年金額によっては不足します。

年金額別の検証は 老人ホームの費用相場まとめ で扱っています。まずは親の年金額を正確に把握することから始めてください。

介護保険の申請前に使ったお金は戻りますか?

要介護認定には申請から結果まで時間がかかりますが、認定されれば申請日にさかのぼって保険が適用されます。そのため、申請を先に済ませておくことが金銭的にも重要です。

手続きの流れは 要介護認定とは?申請から認定までの流れ をご覧ください。

民間の介護保険に入るべきですか?

公的介護保険でカバーされない部分に備える選択肢のひとつですが、加入時の年齢や条件によって保険料は大きく変わります。

当サイトは保険商品の販売や紹介を行っていないため、必要性の判断はご自身の資産状況をもとに、複数の情報源で比較検討してください。

お金が足りないときはどうすればよいですか?

ひとりで抱え込まず、まず相談してください。負担軽減の制度、施設であれば多床室への住み替え、社会福祉法人による軽減など、取れる手は複数あります。

相談先は 地域包括支援センター、または担当のケアマネジャーです。

まとめ

  • 介護期間の平均は55.0か月(4年7か月)4年を超えた人が約4割
  • 一時費用の平均は47.2万円(住宅改造・介護用ベッドなど)
  • 月々の費用の平均は9.0万円
  • 平均値を組み合わせた総額の目安は約540万円。ただし4年7か月に分散する
  • 在宅5.3万円/施設13.8万円。差は月8.5万円、年間約100万円
  • ただし在宅の数字に家族の労力は含まれていない
  • 住宅改修は上限20万円・工事前申請必須。介護ベッドはレンタルが使える
  • 払い戻しや控除の制度はすべて申請が必要

平均を知る目的は、身構えることではありません。見通しを持つことです。

4年7か月という期間が分かれば、走り方が変わります。使える制度が分かれば、備え方が変わります。金額そのものより、先が見えないことのほうが人を消耗させます。

参考にした主な資料

※費用・期間の数値は生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(2人以上世帯)」2024(令和6)年度によるものです。平均値であり、実際の負担は個々の状況によって異なります。制度は改正されることがあるため、最新の情報はお住まいの市区町村にご確認ください。