親の介護は何から始める?最初にやること5ステップ【全体ガイド】
「親が入院した」「最近、実家の親の物忘れが増えてきた」――介護は、ある日突然始まります。多くの方が40代から60代で親の介護に直面しますが、学校でも職場でも介護の始め方は教わりません。何から手をつければいいのか分からず、不安だけが大きくなってしまう方がほとんどです。
結論からお伝えすると、最初にやることは「地域包括支援センターに相談する」、この一つだけ覚えておけば大丈夫です。この記事では、そこから先の流れも含めて、介護の始め方を5つのステップで時系列に解説します。全体の地図として、必要なところから読んでください。
※本記事は2026年7月20日時点の制度情報をもとにした一般的な解説です。お住まいの市区町村によって窓口の名称や運用が異なる場合があります。個別の状況については、記事内で紹介する公的窓口にご相談ください。
介護の始まり方は、大きく2パターン
介護の入り口は人によって違いますが、大きく分けると次の2つのパターンがあります。自分がどちらに当てはまるかで、動き方のスピード感が変わります。
パターン1:入院や骨折で「突然」始まる
脳卒中や転倒による骨折などで親が入院し、「退院後は一人で生活できません」と病院から告げられるケースです。
この場合は退院日までに介護の受け皿を用意する必要があるため、時間との勝負になります。
入院中の病院には「医療ソーシャルワーカー(MSW)」や退院支援の担当者がいるので、まず病院の相談窓口に「退院後の生活が不安だ」と伝えてください。
あわせて、この後説明する要介護認定の申請を入院中から進めておくと、退院後すぐに介護サービスを使える可能性が高くなります。入院直後の手続き・お金・仕事の休み方は親が倒れたらすぐやること|入院直後の手続き・お金・仕事の休み方を時系列で解説で詳しくまとめています。
パターン2:物忘れや体の衰えで「じわじわ」始まる
「同じことを何度も聞くようになった」
「冷蔵庫に同じ食材がいくつもある」
「歩くのが遅くなり、外出しなくなった」
など、少しずつ気になるサインが増えていくケースです。
緊急性は低く見えますが、「まだ大丈夫」と先延ばしにするほど、倒れてから慌てることになります。気になり始めた今の段階で相談だけでも済ませておくと、いざというときの動きがまったく違います。「年のせい」との見分け方や受診の進め方は親の物忘れが増えたと感じたら|「年のせい」と受診すべきサインの見分け方で詳しく解説しています。
最初にやること5ステップの全体像
介護の始まりから介護サービスの利用開始までの流れは、次の5ステップに整理できます。
| ステップ | やること | どこで・誰と |
|---|---|---|
| 1 | 相談する | 地域包括支援センター(無料) |
| 2 | 要介護認定を申請する | 市区町村の介護保険窓口 |
| 3 | ケアマネジャーを決めてケアプランを作る | 居宅介護支援事業所など |
| 4 | 家族で分担とお金を話し合う | 家族会議 |
| 5 | 仕事と介護の両立制度を使う | 勤務先 |
ステップ1〜3は制度の手続き、ステップ4〜5は家族と自分の生活を守るための準備です。順番に見ていきましょう。
ステップ1:まず「地域包括支援センター」に相談する
地域包括支援センターは、高齢者の生活全般に関する公的な総合相談窓口です。全国の市区町村に設置されており、保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーといった専門職が、介護・医療・お金・生活の困りごとの相談に無料で応じてくれます。
「介護が必要かどうかまだ分からない」という段階でも相談できます。むしろ、その段階で相談するための窓口です。「親の物忘れが増えて心配」「退院後の生活が不安」と、いま困っていることをそのまま伝えれば、必要な手続きやサービスを整理して教えてくれます。
探し方は簡単で、「(親が住んでいる市区町村名) 地域包括支援センター」で検索すれば、担当地域のセンターが見つかります。ポイントは、自分の住所地ではなく「親の住所地」のセンターに相談することです。離れて暮らしている場合は、電話での相談から始めても構いません。センターの役割や相談の流れは地域包括支援センターとは?役割・相談できること・探し方を家族目線で解説で詳しくまとめています。
ステップ2:要介護認定を申請する
介護保険のサービス(ホームヘルパー、デイサービス、介護ベッドのレンタルなど)を1〜3割の自己負担で利用するには、要介護認定を受ける必要があります。「介護が必要な状態かどうか、どの程度か」を市区町村が公式に判定する手続きです。
申請先は、親が住んでいる市区町村の介護保険窓口です。本人だけでなく家族が代理で申請でき、地域包括支援センターに申請の代行を頼むこともできます。申請時には、65歳以上の方は介護保険被保険者証(65歳になると市区町村から郵送されています)、40〜64歳の方は医療保険の保険証が必要です(40〜64歳は、加齢に伴う特定の病気が原因の場合に対象となります)。
申請すると、調査員が自宅や病院を訪ねて心身の状態を聞き取る認定調査と、主治医が意見書を書く手続きが行われ、原則30日以内に結果が通知されます。結果は「非該当」「要支援1・2」「要介護1〜5」の8段階で、数字が大きいほど手厚い介護が必要な状態です。
ここで知っておきたいのが、介護サービスは申請日にさかのぼって利用できるという点です。結果が出る前でも、暫定的なケアプランを作ればサービスを使い始められるため、退院が迫っているような場合でも「認定待ちだから何もできない」わけではありません。この点も地域包括支援センターやケアマネジャーに相談できます。申請書の書き方から認定調査で損をしないコツまでは要介護認定とは?申請から認定までの流れと、調査で損をしないコツで詳しく解説しています。
ステップ3:ケアマネジャーを決めて、ケアプランを作る
認定結果が出たら、どのサービスをどれだけ使うかの計画書(ケアプラン)を作ります。このケアプランを作り、サービス事業者との調整役を担ってくれる専門職がケアマネジャー(介護支援専門員)です。
要介護1〜5の場合は居宅介護支援事業所のケアマネジャーに、要支援1・2の場合は主に地域包括支援センターに依頼します。事業所のリストは市区町村や地域包括支援センターでもらえます。ケアプランの作成やケアマネジャーへの依頼に自己負担はかかりません(2026年7月時点。費用は介護保険から全額給付されます)。
ケアマネジャーは、この先何年も続く介護生活の「伴走者」になる存在です。相性が合わないと感じたら途中で変更もできます。探し方や選び方のコツはケアマネジャーとは?探し方・選び方のコツと、合わないときの変更方法で詳しく解説しています。
ステップ4:家族で「分担」と「お金」を話し合う
手続きと並行して、早い段階で家族会議を開くことをおすすめします。介護のトラブルの多くは、サービス選びではなく家族間の「誰が・どこまで・いくら」の曖昧さから生まれるからです。最初に話し合っておきたいのは次の3点です。
- 役割分担:主に対応する人(キーパーソン)を決めつつ、その人に集中しすぎない分担を考える。遠方の兄弟姉妹も、金銭負担や書類手続きなど離れていてもできる役割を持つ
- お金の原則:介護費用は親自身のお金(年金・預貯金)から出すのが大原則。子どもが自分の家計から立て替え続けると、自分の老後資金を削り、共倒れのリスクが高まります
- 親の意向:可能な限り、本人がどう暮らしたいか(自宅を続けたいか、施設も選択肢か)を本人抜きで決めない
そのためには、親の年金額や預貯金、加入している保険をある程度把握しておく必要があります。聞きづらい話題ですが、「もしものときに困らないように」と手続きの必要性を入り口にすると切り出しやすくなります。会議で決めるべき議題や、もめないための進め方は介護が始まる前の家族会議|決めること6つと、もめないための進め方で詳しく解説しています。
ステップ5:仕事は辞めずに、両立の制度を使う
働きながら介護に直面した方に、まずお伝えしたいことがあります。「介護のために仕事を辞める」という判断だけは、勢いでしないでください。収入が途絶えると介護費用と自分の生活費の両方が細り、再就職も容易ではありません。国も介護離職の防止に力を入れており、働きながら使える制度が整ってきています。
- 介護休業:家族1人につき通算93日まで、3回に分けて取得できる休業制度。雇用保険から賃金の67%相当の介護休業給付金が支給されます。93日は「介護し続けるための期間」ではなく、要介護認定の申請やケアマネ選びなど、介護の体制を作るための期間と考えるのが現実的です
- 介護休暇:通院の付き添いやケアマネとの面談などのために、年5日(対象家族が2人以上なら年10日)、時間単位でも取得できる休暇です
- そのほか:残業の免除、短時間勤務などの措置も法律で定められています
さらに、2025年4月からは法改正により、家族の介護に直面したことを会社に伝えた従業員に対して、会社側が両立支援制度を個別に説明し、利用の意向を確認することが義務化されました。40歳になった従業員への制度の情報提供も義務になっています。つまり、「会社に言いにくい」と一人で抱え込むのではなく、まず会社に伝えることが制度活用の入り口になったということです。
初めての介護でやってはいけない3つのこと
最後に、先輩介護者の多くが「やらなければよかった」と振り返る行動を3つ挙げておきます。
- 勢いで仕事を辞める:収入・社会とのつながり・自分の老後資金を同時に失います。辞める判断は、制度を使い切ってからでも遅くありません
- 一人で抱え込む:「自分の親だから自分がやるべき」と思い詰めると、介護うつや共倒れにつながります。介護保険は「介護を社会全体で支える」ための制度です。プロに頼ることは手抜きではありません
- 自分の財布から出し続ける:一度「子どもが払う」形が定着すると後から変えにくくなります。最初から親のお金でまかなう原則を家族で共有しましょう
よくある質問
Q. 離れて暮らす親の介護でも、同じ流れですか?
A. 同じです。相談先は「親の住所地」の地域包括支援センターで、電話相談も可能です。帰省のタイミングに合わせて認定調査や家族会議を設定するなど、スケジュールの工夫が中心になります。遠距離介護のコツは別記事で詳しく扱う予定です。
Q. 親が「介護なんて必要ない」と嫌がる場合は?
A. よくあるケースです。本人を説得する前に、まず家族だけで地域包括支援センターに相談してください。本人が拒否している段階での関わり方も含めて、対応を一緒に考えてくれます。「介護」という言葉を使わず、「健康チェック」「困りごとの相談」として専門職に会ってもらう方法もあります。
Q. 親にお金がない場合はどうすれば?
A. 所得に応じて自己負担を軽くする仕組み(高額介護サービス費など)や、市区町村独自の助成制度があります。お金を理由に介護をあきらめる前に、地域包括支援センターや市区町村の窓口で使える制度を確認してください。費用の詳細は「介護保険・お金」カテゴリーの記事で順次解説していきます。
まとめ:迷ったら「地域包括支援センター」へ
介護の始め方を5つのステップで解説しました。情報量が多く感じられたかもしれませんが、覚えておくべきことは一つだけです。迷ったら、親の住所地の地域包括支援センターに相談する。そこから要介護認定、ケアマネジャー選び、サービス利用へと、専門職が道筋を示してくれます。
そして、手続きと同じくらい大切なのが、家族の分担とお金の原則を早めに話し合うこと、そして仕事を辞めずに両立の制度を使うことです。介護は数年から10年以上続くこともある長距離走です。最初の一歩を正しく踏み出して、あなた自身の生活も守りながら進んでいきましょう。